連草

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障がい者と進化論

弱肉強食の何が悪い?

そんな考えを論破したとして、かねて有名な「Yahoo知恵袋」のやりとりがある。

 

この中の、

自然界の掟は、個体レベルでは「全肉全食」で、種レベルでは「適者生存」です・・・

として本文がはじまる、「ベストアンサー」の回答だ。

 

シリアルキラーがしでかした知的障がい者殺傷事件の影響だろうけど、最近、SNSタイムラインで何度もこれを見かけた。

でもこれって、いいこと言ってそうで正しくなく、むしろ危険かもしれないと感じる。

 

件の「ベストアンサー」は進化論をベースにしており、要約すると次のとおり。

  1. 適応という切り口で見たら、遺伝子に優劣はない
  2. 人の生存戦略は「社会性」
  3. だから社会で、あらゆる個体を生存させて多様性を維持すべき

 

1はそのとおりだと思う。

2も、まあそういう見方はあるかもね、と思う。

でも、そっから3というのは、論理的に飛躍だろう。

 

「障害」の程度・内容にもよるが、特別の支えなしに生存できない個体は、およそ現世に適応しているとはいえない。

そのような個体は、たとえ社会の力で天寿を全うできたとしても、まず子孫は残せないだろう。まして、現世に適応した個体群を押し退けて、子孫繁栄する系譜の始祖になるとは考えられない。

 

たしかに、現世で「障害」と評される形質が、環境の激変した未来に、生存上で有利となる(不利にならない)ということは、あり得るかもしれん。

そうだとしても、その未来に繁殖するのは、その未来に発生した個体からだ。

 

ボクは、「障害」形質を持った個体(障がい者)の生存を図ることを、進化論的に説明するのは間違ってると思う。

進化論は価値中立的な「カガク」であり、アリテイにいうと非人間的だからだ。

それは、「弱者切捨が人の本性だ。群れ(社会)とはそういうものだ」といった思想さえ飲み込む。実際、つい70年ちょっと前には、先進国にも、進化論の延長で優生学を語る者がうじゃうじゃいた。

優生学を進化論の乱用だと言うなら、同様に、弱者保護に進化論を持ち出すのも乱用だと思う。


障がい者保護の意義は?

あらためて考えると難しい。

そもそも、こんな議論がされるようになったのは、人の歴史の中でもごくごく「最近」のこと。それも、余裕のある社会の中でだけだ。

そんな現代日本でも、(体外で生存できない)胎児なら、形質が好ましくない等の理由で間引くことが事実上認められる・・・

難しいね。


批判もある24時間テレビだが、ボクは「あり」と思う。見ないけど(笑)。

ステレオタイプな「けなげな障がい者」を映し出すばかりで、芸がない。

でも「けなげな障がい者」がいるのも事実だ。いくらかの障がい者や家族や関係者に、良い影響を与えているのも現実だろう。

放送局や広告屋やスポンサーやタレントにとって「ビジネス」なのは間違いないけど、その何が悪い? 福祉だって何だって、継続のためにはソロバンが必要だ。

 

裏番組で、NHKがアンチテーゼ的な切り口で障がい者を扱ったことが話題になった。ボクは、これも英断だと思う。

両論併記。真っ当な議論であり、建設的だ。


「保護しない」論を併記すべきか?

これまた難しい。

「言霊」って、古代日本人が発見した真理だ。強い言葉は憑依・感染する。

障がい者排除」なんて、「口に出すのも憚られる」ってのは正常な感覚だろう。

 

優生学の支持者は、ちょっと前にはうじゃうじゃいた。

今も、いち犯罪者レベルでは存在する。たぶん氷山の一角だ。

焼けぼっくいが燻ってる中に、「言霊」を一人歩きさせるのは危険だ。

 

専門家やマスコミには、是非「障がい者保護」論の「強い言葉」を発見してほしいと思う。

 

補遺:大人の教養

十年一昔というが、学生だった数十年前なんて大昔だ。

大人になって教養を取り戻すのは難儀する。でも、できれば取り戻したい。そんな方におすすめの本を紹介しよう。

 

  

 

著者の橘玲(たちばなあきら)さんは、投資系の著作が多く、熱烈な支持者を集めている。ただその主張は独特で、人を選ぶかもしれん。

 

さておき、この人のキュレーション能力はすごい。

本書は、さらっと読めるが、内容はこってりだ。文系(人文・社会科学)の諸分野に関して「フレッシュな知見」と「書き換えられた知見」を分別して紹介する取り組みだ。

もちろん、後者は廃棄すべしとの主張が込められており、それがタイトルになってる。

進化論やゲーム理論などの「フレッシュな知見」が、相互の関連性までうかがえるように見事に整理整頓されている。

いわば、文系スモールワールドの「ハブ」となる本だ(この表現が腑に落ちない方こそ、本書を読んでほしい)。

 

橘さんの主観を介した整理であり、ガイダンスと割り切って読む本だけど、社会人が再学習する入口としては最適だと思う。

ちなみに、彼は若人をターゲットにして書いたと言ってるが、正直、学生にとっては劇薬かもしれん。この本を真に受けると、いくつかの分野(たとえば哲学)では、学ぶ気力が削がれるだろう。

 

この手の「マーカー引きながら読み飛ばす」たぐいの本は、電子書籍があれば絶対そっちがいい。

Kindleの便利さについては、いつか書こう。