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連草

福岡人向けグルメ情報+真面目なゲスネタ+α

千代の富士(九重親方)哀悼

千代の富士が死んだ。

一時代を築いた大横綱だった。

(相撲取りの中では)小柄な身体に、筋肉の鎧をまとい、強引で強烈な投げでばったばったと投げ捨てる爽快な取り口が魅力のお相撲さんだった。

 

ただ、国民栄誉賞まで受賞した偉人の割には、取り上げられ方がおとなしい気がする。

相撲人気の凋落も一因だろう。でも、たぶんそれだけじゃない。

 

とことん勝負に徹した人だった。

デーモン姿(世を忍ぶ仮の姿ではない真の風貌)のまま、NHKの相撲解説を担われるデーモン小暮閣下は、ご自身のブログで、

「ハングリーさが体中からにじみ出ていた。頂点を極めた後も、引退の直前までずっと狡猾だった」などと評されている。

 

奥歯に物の挟まったような言い方だけど、要するに千代の富士は、大横綱でありながら、らしからぬギラギラさで、執拗に勝負にこだわり、貪欲に勝利をもぎ取る人だったんだ。

たとえば出稽古で、台頭する芽を摘んだりして。

あるいは本場所で、挑んでくる者を叩き落としたりして。

 


 

実績は抜群なんだけど、そのポジションは、大鵬北の湖とはずいぶん違う。

朝青龍みたいにやんちゃで、それより遥かに冷酷苛烈だ。

 

現役時代の天敵というと北天佑だけど(彼もガンで早世)、ほんとかどうか知らんが、個人的な恨みを買っていたとかいなかったとか・・・

 

ちょっと前には、相撲協会の理事からもはじかれてたね。

まあ、何やかんや、いろいろあった人なんでしょう。

 

 

とにかくカッコ良かった。

現役時代の千代の富士は、抜群にカッコ良かった。

彼より実績ある横綱はいるが、彼よりカッコ良い力士は多分いない。客観的に。

だって渾名が「ウルフ」だよ。彼にはぴったりはまっていたけど、本来、お相撲さんにつく渾名じゃないよね。

 

ボクは北天佑も好きだったけど、「お相撲さん」イメージそのままの北天佑と、ウルフ千代の富士の力相撲は、すばらしく見応えがあった。

 


 

あのころは、スイーツ大乃国や、飄々旭富士らが綱にいて、

大関陣には北天佑の他、愛敬一番朝潮、 ベビーフェイス若嶋津、ヒール小錦ヘラクレス霧島など、役者が揃ってた。

その下にも、逆鉾寺尾の曲者兄弟や、くっそ重い安芸乃島、怪獣ぽい栃乃和歌など、みんなみんなキャラが濃ゆかった。

 

彼らが、全力で千代に挑み、ばったばった投げられる。

千代に勝てば昇進できる。昇進するには千代に勝つしかない。

その、リアルで残酷なドラマは、見ていて飽きなかった。

 

そう。無慈悲に勝負にこだわる千代の富士は、最強のボスキャラだったんだ。

栃・若とか柏・鵬のように、彼には対になる(なれる)存在はいなかったけど、独りで、長期間トップの座に君臨し、昇ってくる者を蹴落とし続けた。その情け容赦ない存在感は、現役最強の白鵬といえど遠く及ばない。

 

ただ、カッコ良かった千代の富士は、とうの昔にいなくなった。

千代が引退して九重になったとき、大横綱は、既に歴史となったんだ。

訃報に接して、一抹の感慨とともに、そう思った。たぶん、みんな同じではないだろうか。