連草

福岡人向けグルメ情報+真面目なゲスネタ+α

もしも男子高校生が信長だったら

タイムスリップ

創作物は、どこかにリアリティがないといけない。

舞台は、①現在、②過去、③未来、④パラレルワールドに大別されようが、後ろになるほど、設定にリアリティを出すのに力量がいる。

登場人物は、舞台となる時空を生きる者であるのが原則だけど、これには例外がある。たとえばタイムスリップだ。 

未来から現在に来たのがドラえもん。過去から現在に来るのがルシウス・モデストゥス。現在から過去に行くのが南方仁

 

    

 

ドラえもんって、リアリティもクソもないんだけど、タイムスリップという突飛な設定を「こんなこといいな できたらいいな」で済まして大衆化した功績がとても大きいね。

今や、タイムマシーンに乗らなくても、メカニズムに一切言及しないでも、作者の都合で自由自在にタイムスリップが発生する世の中になった。何かがおかしい。

 

現在と、近い過去・近い未来を行き来する話もある。「僕だけがいない街」や「orange」など。

どっちも完結してるし、よくできている。ただボクは、何と言うか下手にリアリティがありすぎる話を読むと、「そもそも時空を超えるって設定がどうなん?」って根本的なクエスチョンを思い出して、世界観に入れない。一見の価値はあると思うけどね。

 

  

 

現代人が過去に行く話

タイムスリップ話の中でもよくあるのが、現代人が過去に行くパターン。ただこれにもいろんなタイプがある。

最近お気に入りの「銀平飯科帳」は、仁のように、現代人が過去の世界でヒーローになるタイプ。「現代人」というのがアドバンテージで、過去に行くだけでヒーローになれる。この手の快哉なやつなら、「行くだけってのがそもそもどうなん?」って野暮は言わずに単純に楽しめる。

現代人が「ハード」な時代に行って苦労するタイプもあるが、ボクにはつらい。「ジパング」がそう(と思う。途中で挫折した)。「シュトヘル」もこのタイプかな。残念無念な未完マンガ「皇国の守護者」を描いた天才の作品だけど、ヴェロニカちゃん可愛いってくらいしか感想はない。

 

    

 

 

「天」のしわざ

タイムスリップで現代人が過去に行く、だけじゃなく、過去の人になりかわってしまうというトンデモ設定のマンガがある。

歴史上の最重要人物の1人 織田信長を題材にする暴挙を敢行した「信長協奏曲」には驚愕した。映画化もされたね(見てない)。すげえ。

サブキャラとして信長を出す、タイムスリップものの「信長のシェフ」や、非タイムスリップの時代劇「センゴク」なんかと併せて読むのも楽しい。

 

     

 

この「信長協奏曲」って、ノンキな男子高校生が信長になりかわるってストーリー。

もうねアホかと。こんな企画よく通したなと。はいはい物珍しいね、奇をてらってるねーと。 ・・・ まさに天才の仕事也。

 

とにかく熱く熱く熱苦しいことでは人後に落ちない曽田正人さんがバレエダンサーを描いたマンガ「昴」。その中で、主人公の先達(ライバル)が、主人公を評して物語ったセリフとして「あなたもやらされてる系か・・・」というのがある(8巻・82話)。

つきぬけた人物の行動原理が、ある種の義務感(使命感)であることを示したものであり、鮮烈な説得力がある。

 

 

信長を「演じる」男子高校生が、まさにこれ。

彼は歴史に疎く、信長をイメージでしか知らない。でもその「信長かくあるべし」との行動原理が、家臣団にはこの上なく頼もしく映る。

信長の、当時の常識にとらわれない自由な行動や合理的な施策も、450年を隔てた男子高校生にとってはごく普通なこと。その自然な振舞いが、説得力を帯びる。

ホントよくできてるねー

物語はぼちぼち本能寺だが、どういう結末をつけてくれるかワクワクしてる。誰も追随できない(したら陳腐になる)設定の独占使用者として、責任をもってラストまで描ききって頂きたいと切に願う。

 

補遺:藤田和日郎さん

曽田正人さんに触れたら、藤田和日郎さんを出さないわけにはいかない。

勝るとも劣らない熱マンガの巨匠で、広げまくった大風呂敷を見事にたたみきった奇跡的な傑作「うしおととら」の作者さん。

この人の長編は、綿密にストーリーを立てないで描くのか、立てても勢い余ってあらぬ方向に筆が走るのか知らんが、わりとグダグダ。「からくりサーカス」では破綻するストーリーを強引に辻褄合わせしてたし、「月光条例」は途中で読むのが辛くなった。

でも好きなんだよなあ。からくりサーカスも部分部分はとても面白いし、しろがね可愛い。奇譚系の短編はどれも珠玉だし、ちょい前に集中連載されたナイチンゲールが主人公の「黒博物館 ゴーストアンドレディ」は、うしおととらに並ぶ大傑作。

やっぱり天才、大天才。

ともかくサンデーの新連載「双亡亭壊すべし」は期待大だね!